2019年10月30日

2019年10月~11月 辻蕎麦便り







 神無月。

「山形県と秋田県にまたがる鳥海山できょう初冠雪が観測されました」。
テレビやラジオで28日こんなニュースが流れました。
「えっ、まだだったの」といぶかる気持ちで耳を傾けていたら、平年に比べて18日も遅いということです。
やはりと納得した瞬間、40年ほど前の10月10日を思い出しました。
当時鳥海山の近くに住んでおり、休日だったこの日鳥海登山を計画していたのです。
きれいに晴れ渡った青空の下、早朝から登り始め、7合目にあるカルデラの鳥海湖近くまでたどり着いた時、わが目を疑う光景に出合いました。
一面の草紅葉の上に白い粉砂糖を薄く振りかけたように、雪がふわーっとのっているのです。
口でふっと吹けば、飛んで行くのではないかという感じでした。
雪国生まれの雪国育ちですが、こんなきれいな雪景色は初めてです。
夢の世界に迷い込んだのでは、と思ったのも束の間、歩みを止めた瞬間に汗でびっしょりの体を凄まじい冷気が襲ってきました。
慌てて素っ裸になり下着を取り替えました。
幸いにも周囲に人影は全くありませんでした。

 それにしても18日も初冠雪が遅れるなんて。
これも地球温暖化というか、異常気象の影響なのでしょうか。
異常気象といえば、台風19号。
被災者の皆様には心からお見舞い申し上げます。
実は山形市や天童市などがある山形盆地は自然災害の少ないところで、深刻な台風被害もめったにありません。
ところが今回の台風は、山形盆地の一部で建物損壊や農作物への被害をもたらしました。
ささやかなわが菜園でも野菜の多くが見事になぎ倒されました。
こんなことはあまり記憶にありません。
自家用だし、完全にダメになったわけではありませんが、専業農家の方たちは本当に大変でしょう。

 異常気象といいながらも季節は移ろって、ことしも新そばの時季を迎えました。
ソバの栽培面積が北海道に次いで2位の山形県。
週末にはあちこちで新そば祭りが開かれ、さまざまなイベントを繰り広げ多くの人でにぎわっています。
イベントといえば、県内にはそばにまつわるギネス記録があるのです。
1998年に村山市の「村山蕎麦の会」が、山形そばの代名詞でもある板そばで企画。
長さ約90㍍の板の上に新そばを盛り、約600人が一斉に食べるというものでした。
圧巻だったでしょうね。
そばを打ち、茹でる人たちのことを考えたらその大変さがしのばれますが。
この催しは規模を縮小し、毎年行われているようです。

 わが工房でも、新そば特有の馥郁たる香りに包まれながら、作業に励んでおります。
それぞれの蕎麦粉が持つ特長を最大限引き出し、美味しいお蕎麦をお届けできるよう懸命に努めておりますので、存分に味と香りをお楽しみください。







posted by 辻蕎麦(つじそば) at 13:13| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2019年09月29日

2019年9月~10月 辻蕎麦便り







 長月。

 酷暑やゲリラ豪雨など厳しい気象にさらされた今年の夏でしたが、自然界の植物たちは強いですね。
いくら痛めつけられてもその都度立ち直り、すっかり実りの秋にふさわしい姿を見せてくれています。
その実りが満載の施設を紹介します。

 天童市の隣の東根市にあるJAの産直施設「よってけポポラ」。
2年前の日本農業新聞によりますと、年間売上高は13億円余り。
JA産直施設では全国で16位にランクされており、東北では唯一10億円を超しています。
約600人の農家が登録し、毎日、採りたての果物や野菜を持ち込んでいます。
売れ残った商品はその日のうちに回収するとか。
完全に畑と売り場が直結しているわけです。
ここの特徴は、なんといっても果物の多さでしょう。
全国生産の7割を占める山形県のサクランボ。
東根市はこの施設を運営するJAの名前「さくらんぼひがしね」からもうかがえるように、サクランボの主産地なのです。
このシーズンはモモが一段落し、ブドウに移ってきています。
シャインマスカットや巨峰など高級ブドウの代名詞のような品種が品物を並べる台にあふれるように積まれています。
あと1カ月もするとリンゴやラフランスなどが主役になるでしょう。
お客さんは周辺の住民でなく、意外にも多くが仙台市やその近隣の人たち。
実は東根市や天童市、山形市は奥羽山脈という日本列島の背骨の中ほどで仙台市と接しています。
仙台の中心部からこの施設までは車で約1時間。
ドライブを兼ねて買い物を楽しむ市民の車の列は長々と続き、土、日曜などは、仙台市内まで連なっているのではと思わせるほど。
駐車場の車のナンバーは「仙台」「宮城」が7~8割で、「山形」は1割ほど。
仙台郊外で買い物をしているのではないかと錯覚しかねません。
サクランボもそうですが、果物は遠くにいる家族や親せき、友人などに送るのでしょう。
自宅で消費する野菜と一緒に、化粧箱に入った果物を5箱、10箱と大量買いし、せっせと宅配伝票に記入する人たちであふれかえっています。

 山形の実りの秋の光景として目につくのは田んぼの黄金の穂波とソバ畑の広大なうねり。
うねりも純白から枯れた色に、茎も緑から赤味ががったものになってきました。
田んぼでは稲刈りが順調に進んでいます。
ソバの収穫もほどなく始まるでしょう。
いよいよ新蕎麦の季節がやってきます。
良質なソバがたくさん採れて、美味しいお蕎麦を皆さんにお届けできるよう期待しております。






posted by 辻蕎麦(つじそば) at 20:13| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2019年08月30日

2019年8月~9月 辻蕎麦便り







 葉月。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」。
暑い、暑いと連日照りつける太陽を恨めし気に見つめていたころが懐かしくなるほど、山形周辺は一気に気温が下がってきました。
郊外に出ると、つい先日まで緑の剣先のような稲穂が風にゆられ、海原の波のように揺れ動いていましたが、あっという間に穂が膨らんで頭を下げています。
一時は低温続きで収量の減少が心配されていましたが、どうやら持ち直してきているようです。
農家の人たちも胸をなで下ろしていることでしょう。

 盆地のなかにある山形や天童は、7月から8月にかけて日中の気温が35℃を超えることは珍しくありません。
ただ夕方、太陽が山の彼方に沈むと同時に暑さが和らぎ、ほてった肌には涼しくさえ感じられるほどになります。
夜が寝苦しいなどといったことはほとんどありませんでした。
ところが先月下旬から今月半ばにかけて、この“常識”が覆されてしまったのです。
熱帯夜が続いた上に、日中の尋常でない高温が住宅のいたるところにしっかり忍び込み、夜中に壁や床から這い出してくるのです。
いつもなら寝ている間にクーラーを使うことはほとんどありませんが、さすがに今年は無理でした。
体中に汗をかき、頻繁に目覚めてしまいます。
完全な睡眠不足に陥り、いわゆる「夏バテ状態」に。
山形でこんなことになるとは思いもしませんでした。

 この猛暑も20日を境に一転。
明け方にどこからか冷気が忍び込んでくるようになり、2、3日は涼しくて寝やすくなったと喜んだのも束の間、今度は肌寒さで目を覚ますようになりました。
タオルケット1枚では体に寒さが残るので、薄い夏用の布団を掛けて凌ぐ有様。
この気温の乱高下になかなか体調がついていけません。
季節や気温はもう少し緩やかに移ろってほしいものです。

 これまでも何回か書いてきましたが、日本は世界中でも四季がはっきりしており、その中でも山形周辺は春夏秋冬が色濃く認識できる地域でした。
春夏秋冬は3カ月ずつあるものと信じていましたが、近年はどうやら崩れてきているのではないかという気がしてなりません。
というより、春なら春、夏なら夏の天候が続くのではなく、春の中に冬や夏が混じったり、夏の中に秋が混じってきたりで、季節がぼやけてきているように感じます。
こんな状態が長く続けば、自然は変質していくでしょうし、われわれの生活だって変わっていくのではないでしょうか。
さまざまな「旬」がいつの時季なのか分からないなどということだけは絶対になってほしくないものです。





posted by 辻蕎麦(つじそば) at 07:20| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする