2020年09月29日

2020年9月~10月 辻蕎麦便り






 長月。
「あの抜けるような青空がほしい」。
猛暑がおさまり、雨も降りだし、秋の気配が色濃く感じられるようになりました。
それとともに太陽がどこかに行ってしまったようです。毎日のように雲が覆い尽くし、青空も時折り雲の切れ間からちょっぴり見える程度。
秋の空といえば、澄み切って吸い込まれていきそうなほどの快晴になるはずなのに、とぼやきたくなります。

 例年ならそんな青空の下、山形市の馬見ヶ崎川の河川敷では所狭しと芋煮会の煙が立ち上り、市民の笑い声が広がっている時期です。
この20日には、芋煮会を象徴するイベント「日本一の芋煮会フェスティバル」が行われ、直径6.5㍍の大鍋で煮られた芋煮3万5千食が振舞われる予定でした。
ちなみに昨年は里芋3㌧、牛肉1.2㌧、こんにゃく3,500枚、ねぎ3,500本、醤油700㍑、日本酒50本(1.8㍑入り)、砂糖200㌔㌘を使ったということです。
テレビのニュースなどでご覧になった方も多いのではないでしょうか。
フェスティバル専用のバックホーまで動員しての芋煮作りは実に壮観です。

 ところが新型コロナウイルスの影響で今年は一転し、大鍋を使っての芋煮は中止。
すべて取りやめるのは寂しいという声を受け、フェスティバル実行委員会は「ドライブスルーで芋に恋して」と題して代替イベントを実施。
直径1.3㍍から2.3㍍の3つの鍋で4000食を作り、予約した来場者に提供しました。
物足りなさを感じつつも、いつもの味を楽しんだようです。

 こうした大規模イベントはともかく、仲間たちによる河原での芋煮会も極端に少なくなっているのは寂しい限りです。
秋の色が増す中で、家族や友人同士、職場、サークル、学校などさまざまなグループが同じ鍋の芋煮を食し、談笑する風物詩が姿を消すなどということは想像できませんでした。

 そんなことを考えていたら、ふと昭和30年代の子供のころにやったもうひとつの芋煮会が浮かんできました。
時期は夏休み。
現代の芋煮会と同じなのは河原に設けた石のかまどで薪を燃やして作るということだけ。
具は全く違います。
新ジャガイモ、インゲン、ネギ、それにイルカと呼んでいた塩クジラで、醤油汁です。
なかなか味の想像がつかないのではないでしょうか。
鍋を囲んでいる中に大人の顔は記憶にありません。
炎天下で、小学校高学年の子供たちを中心にやっていたのでしょう。
この芋煮会はいつの間にか姿を消し、まぼろしの行事になってしまったようです。

 現代の芋煮会が新型コロナウイルスに負けずに、これからも人々の交流の場としてしっかり続いていくよう願ってやみません。





 
posted by 辻蕎麦(つじそば) at 10:40| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2020年08月31日

2020年8月~9月号 辻蕎麦便り






 葉月。

「いくら熱帯で生まれたからといって、ここで暮らして長すぎるほど長いのだから、この暑さはさすがにかなわんよ。いい加減にしてほしい」。
炎天下でいささかげんなりしているように見えるイネたちからこんなぼやきが聞こえてきそうです。

 日本列島で山形だけが暑いのではないことは百も承知ですが、ひょっとしたら昨年よりさらに暑くなっているのではなかと、ちょっと調べてみました。
山形地方気象台の過去の気象データによりますと、8月の最高気温が35℃以上の猛暑日は昨年とほぼ同じ8日間ですが、30℃以上の真夏日は昨年が10日間だったのに対し、今年は29日までで17日間。
30℃に満たなかったのはたった4日間で、いってみれば間断なく暑さが続いているわけです。
道路も建物もたっぷり熱を蓄えているので、朝夕に少々気温が下がったところで、全く涼しくなりません。
昨年は1週間に1回くらいの割合でまとまった雨が降り、視覚的なものも含めて気温を下げるのに大きな効果がありましたが、今月は8日、9日、11日に降っただけです。
量的にもそれほどでありませんでした。

 わがささやかな菜園もこの暑さと雨なしで、さすがの夏野菜たちもすっかり元気をなくしています。
土はかちかちに硬くなり、「オーバーな」といわれるかもしれませんが、ちょっと見には“土漠” のような感じです。
表面の土を器具で砕いて散水しても、なかなか土の奥までは届きません。
「所によって雨」の天気予報がたまに流れますが、なかなか「所」にならずに、恨めし気に天を仰ぐだけです。
秋冬野菜の播種の時期を迎えていますが、こんなに気温が高く、しかも“土漠”のような状態が続いているのでは、果たしてきちんと発芽し、順調に生育してくれるのか心配になってきます。
7月は長雨と日照不足に悩まされ、8月に入りようやく天気が回復したかと思ったら、今度は高温と雨量不足に悩まされる。
本当に自然はままならないものです。
野菜栽培農家の方々のご苦労はひとかたならないものでしょう。
消費者も野菜の高値が続いており、一日も早く状況が変わってほしいと願っていることでしょう。

 県内各地のそば畑では花が咲き始め白い海原が大きなうねりを見せてくれる時期になりました。
少しでも良い環境の中で育ち、美味しいそばが豊作になるようにと期待しております。
posted by 辻蕎麦(つじそば) at 08:18| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2020年07月31日

2020年7月~8月号 辻蕎麦便り






 文月。

「これをお願いします」。
注文を取りに来たお店の人に1枚の紙を手渡されました。
A4版の用紙に、住所、氏名、年齢、男女、電話番号、同行者人数を記入するようになっています。
こうしたやり取りがあると聞いてはいたものの、一瞬戸惑いを覚えます。
新型コロナウイルス感染対策の一環なのだとか。
説明文によりますと、万一、この店関連で感染者が確認された時に、早急に連絡できるようにとの事です。

ここはこの集落で行き止まりという県内の山里の蕎麦屋さん。
古民家を利用し、敷地の入り口周辺に数本ある「蕎麦」の旗で、ようやくお店と分かるようなところです。
4連休中とはいえ、時間をちょっと外したのでそれほど込み合っているとは思わなかったのですが、10数台分の駐車スペースは満杯で、しばし待つことに。車のナンバーを見たら「山形」はわが1台だけで、残りはすべて県外。
しかも首都圏や中京圏のものが目立つ。
幹線道路からこんなに離れた地域なのに、さすがインターネット時代ですね。
一昔前なら、まさに知る人ぞ知るお店だったのですが・・

もちろん個人情報を秘匿しなければならないような身ではないので、お蕎麦が来る前に、出された自慢の漬物を味わいながら空欄を埋めました。
長年にわたり県内はもとより全国各地の蕎麦屋さんを訪れましたが、身元を明らかにして食事をしたのは初めての体験です。
人生、本当にいろいろあるものですね。
お店を出て再び周囲の山々を見渡しながら運転し、ここで新型コロナウイルスの心配をしなければならない、こんな似合わないものはないと思わざるをえませんでした。


 「大丈夫ですか」「相当にひどいようですね、十分気を付けてください」。
7月28日夜から29日にかけて心配した全国の友人知人から電話が相次ぎました。
停滞する梅雨前線や低気圧の影響で県内各地が豪雨に見舞われ、県内を縦断する最上川をはじめその支流が各地で氾濫しました。
広範囲に避難勧告や避難指示が出され、スマホからは不安をあおるようなけたたましい音とともに行政の緊急情報が流れてくる。

 大変なことになっているとの予測はつきましたが、7月29日朝にテレビの中継で氾濫した現場が次々に映し出され、言葉を失いました。
見覚えのある景色がことごとく姿、形を変えています。
人でも土地でも、認知度によって発生したニュースに対する衝撃度が違うと言われますが、まさにその通りです。
今回、被災された方々に対し衷心よりお見舞い申し上げます。
併せて1日も早くいつもの生活に戻れるようにと願ってやみません。






posted by 辻蕎麦(つじそば) at 13:09| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする