2020年12月29日

2020年12月 辻蕎麦便り






師走。

昨年の今頃、中国で新型のウイルスが発生し感染が急速に拡大しているというニュースが流れました。
「へー、大変だな」と対岸の火事のような感想を抱いておりましたが、まさかあっという間に全地球的にこのようなことになるとは。
子や孫の帰省を楽しみにしている田舎の祖父母や親にとって年末年始は実に待ち遠しいものです。
それが今年はかないません。
「数駅しか離れていないところに住んでいる孫にもう半年以上会っていない。寂ししい限りだ」と首都圏に住む友人が語っていました。
肉親に会うのもままならなくなる状況が訪れるなど、誰も思い浮かべなかったことでしょう。

帰省できないなら、せめて故郷の香りのするものを届けたいというのが親心ではないでしょうか。
天童市や北隣の東根市などを中心に正月に開花する啓翁桜の栽培が盛んですが、10本前後の枝が入った化粧箱を首都圏に向けて送る人が例年以上に多いようです。
先日、鏡餅セットを求めて加工場直営の販売所を訪れたところ、わが家で毎年飾っていた手ごろなサイズの品が早々とクリスマス前に売り切れたというのです。
店員さんたちもその出足の早さに驚いたとか。
販売状況などを聞くと、自宅用と子供たちに送る分を合わせて購入した可能性が高い。
せめて故郷のもち米で作った鏡餅を飾って正月を迎えてほしいという願いが強かったのではないでしょうか。
恐らく探せば、こうした話はもっともっとあると思います。

この年末年始は数年に一度の強い寒波が日本列島を襲い大荒れになる、と気象庁は数日前から繰り返し注意を喚起しています。
山形や天童などの村山地域は今月中旬に、ほとんど雪が無かった昨シーズンの分までも一緒に降ったのではないかというくらいの大雪に見舞われました。
山形市では14日から降り続いた雪が20日には51㌢にまで積み上がったのです。
天童市、東根市、村山市など北にいくに従い積雪量はカーブを描くように多くなりました。

短時間での急激な降りで、その重さに耐えきれずサクランボやラフランス、ブドウ、柿などの枝折れが多発。さらにサクランボの実割れを防ぐための雨除けテントの施設やハウスが多数倒壊しました。
園地によっては積雪量が多過ぎて足を踏み入れられないため、正確な被害状況を確認できないということです。
サクランボやラフランスの全国一の生産県の主産地だけに来年の収穫が心配です。

昨シーズンは全く雪なしというこれまで経験したことがない“積雪期”を過ごしました。
その後、7月は長雨と日照不足、8月は高温、干天と異常気象の連続で、我がささやかな園地の野菜の栽培サイクルは完全に狂ってしまい、被害甚大でした。
その中で学ぶことも多かったのですが、反省、反省の1年でもありました。

新たに訪れる年こそ、穏やかな気候で推移しますように。
何よりも新型コロナウイルス禍が一日も早く収束し、以前のような生活ができるよう願ってやみません。

今年1年大変お世話になりました。
良いお年をお迎えください。





posted by 辻蕎麦(つじそば) at 22:26| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2020年11月30日

2020年11月~12月 辻蕎麦便り






 霜月。
「西の京都、東の山形といわれているんですよ」。
晩秋になり、雲が低く垂れこめてくると「えっ、何それ」と思いながら半世紀近く前に聞いた話を思い出します。
教えてくれたのは山形県内の漬物業界の方で、漬物の種類の多さでは、山形と京都が双璧ということでした。
かつてもそうだったのかもしれませんが、今でも観光物産店などに行くと実にさまざまな漬物が並んでいます。
キュウリ、ナス、ダイコンなど野菜の一般的なものから、ワラビの一本漬けといった山菜類、それにサクランボやスイカなどの果物まであります。
野菜以外の漬物を県外で目にした記憶はそれほど多くありません。
とにかくありとあらゆるものが漬物になっている感じです。

 雪国では、漬物は冬期間の保存食として欠かすことができませんでした。
雪のない地方と違って、どこを見渡しても白一色になるわけですから。
昔の人たちは、自分たちが生きのびるために、多収穫した野菜類のみならず口に出来そうなものは手あたり次第保存したのではないでしょうか。
今では漬物を漬ける農家も少なくなったようですが、かつては降雪前のこの時期にダイコンや皮を剥いた柿を藁(わら)縄に吊るして干す光景を至る所で目にすることができました。
そうした風物詩も特定のところに足を運ばないと見られなくなってしまい、ちょっと寂しい感じです。

 ダイコンといえばお馴染みの沢庵漬けが浮かんできます。
沢庵漬け発祥の地が山形市の南隣の上山市というのをご存知でしょうか。
江戸幕府がスタートして間もない寛永6年(1629年)、幕府と朝廷の権力闘争に巻き込まれて京都・大徳寺153世の沢庵禅師が上山に流されてきました。
高名な僧を迎えた上山藩主の土岐頼行は城下に小さい庵を建てて住まわせました。
沢庵禅師はこの庵を大変気に入ったらしく、自ら「春雨庵」と名付け花鳥風月をめでながら配流の身を慰めたということです。
先日、久々に「春雨庵」を訪ねてみました。
晩秋のあいにくの天気と新型コロナの影響で人影はありませんでしたが、素朴な佇まいは往時をしのばせてくれます。
門をくぐると右手に「澤庵漬名称発祥の地」と刻まれた石碑が。
「春雨庵」の中で沢庵禅師と上山のかかわりを紹介するビデオが放映されております。
それによりますと3年間の流刑生活中に、京都や江戸文化をはじめ、水利、築堤の設計など様々な知識を領民に授けました。
このため大いに慕われ、近在の農民からダイコンなど多くの野菜が届けられました。
1人では食べきれずそれを干して米糠に漬けた「たくわえ漬け」から「たくあん漬け」になったということです。
その時の製法は今も引き継がれており、ダイコン100本に対して、米糠9升(1升は1.8㍑)、塩3升を使うそうです。
この製法で作った沢庵漬けが上山温泉の名物になっているので、いずれ味わってみたいと思っております。
かなり塩辛そうではありますが。





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2020年10月30日

2020年10月~11月 辻蕎麦便り





神無月。

紅葉前線が急ピッチで麓を目指して降りてくる季節になりました。
今年の紅葉はどのような感じなのでしょうか。
いまのところ残念ながら紅葉見物に行く機会がなく、赤く染まっていく山並みを遠くから眺めるだけです。
いつものこの季節の色合いに見えますが、紅葉の名所は場所によって9月以降の日照不足などから例年に比べてもうひとつといった話も耳にします。

紅葉前線が下ってくるのは歓迎しますが、この秋は歓迎せざるものが盛んに下ってきています。
これは山形県に限った話でなく、全国的に問題になっているようですが、人里での熊の目撃や被害が連日ニュースになっています。

林野庁東北森林管理局が7月に発表したブナの実の豊凶予想では、青森、秋田が並み、岩手、宮城が凶、山形は大凶でした。
この時から熊が里に姿を現すことが多くなるのではないかと思っていましたが、まさかこれほどになるとは。
山形県がまとめた今月21日現在の熊の目撃件数が地元紙に掲載されていました。
既に608件にのぼり過去10年間で最多になっています。
新聞の社会面の大半が熊の目撃や被害のニュースで占められる日もあり、その多さはまさに一目瞭然。
ここ10年ほどは年間の目撃件数が200件から400件で推移しており、過去最多の2016年でも575件でした。
あと2カ月を残しこの数字を軽く上回ってしまったのです。

林道を横切るところを目撃するなどというのはある意味自然なことでしょう。
気になるのは、目撃される場所が山中から人里、それも市街地にまで及び、急増していることです。
熊ほど大きな話題になってはいませんが、イノシシやサル、シカなども人々の生活圏に頻繁に踏み込んできています。
野生動物による農作物の被害は莫大で、全国で年間150億円ほどに上ります。
それだけでなく、市街地までやって来るに至って、人的被害も目立つようになりました。

野生動物がこうも頻繁に人里、しかも市街地まで出現するといったことは、昭和の時代にはあまりなかったように記憶しています。
ここ30年ほどの間に、人間と野生動物相互の営みのバランスが大きく崩れてきたのではないでしょうか。
狩猟者の高齢化に伴い捕獲力が低下し、その結果動物たちの頭数が増えてきた、耕作放棄地が拡大し行動範囲が広がったなど原因はいろいろ挙げられています。
いずれにしてもこうした状況を創り出したのは人間サイドであることは否めません。
抜本的な対策を講じる時期に来ているのではないでしょうか。







posted by 辻蕎麦(つじそば) at 11:59| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする