2021年03月29日

2021年3月~4月 辻蕎麦便り






弥生。

屋根から滑り落ちた雪が軒下に積み重なり、その上にまた屋根から雪崩れてくる。
大人の背丈を超えるほどうず高く積み上がった雪の山。
これほどの量はいつ消えるのだろうかと呆然としたものです。
それも束の間、3月に入った途端に急ピッチで山が低くなりました。

中旬には、あれほどあったのがどこに行ったのと訝しく感じるほど少なくなり、そして待ち焦がれた土が姿を現しました。
田んぼも切り株が見えたと思う間もなく、白一色から茶色の世界が急速に広がります。
白と茶色のまだら模様の中で、なにやらうごめく白い塊が。
天童市の北隣の東根市の道路を車で走行中、前方の田んぼで雪が動いているのではないかと錯覚し、思わず停車してしまいました。
目を凝らしてみると、白鳥の群れです。
大群といってもオーバーでないほどの数が見渡す限りの田んぼでエサをついばんでいるのです。
500羽は軽く超しているようです。

毎年、この周辺で白鳥の姿を見かけますが、こんなに多くの群れは初めてです。
今冬の豪雪と何か関係があるのでしょうか。
白鳥たちは、田んぼの雪融けとともに、より北側の田んぼに移動していきます。
北帰行を前に、いかにたくさん食べて体力を蓄えるか。
われわれの目には優雅についばんでいるように見えますが、彼らにとってはシベリアまでの大移動に備え生死をかけた作業なのでしょう。
一般道から農道に入り、群れの直前まで車を進めても、何ら気に留めることなく嘴を動かしています。
それほど必死なのでしょうね。
無事に日本海を渡ってほしいものです。

ことしは例年になく桜の開花が早いようで、今月20日過ぎには太平洋側の花見の映像が流れるようになりました。
雪国にもようやく遅い春が訪れ、山形市のお城址の霞城公園内の梅も咲き始めました。
紅梅が先行しており、白梅の本格的な開花はこれからのようです。
それでも待ちわびた市民が次々に訪れ、花芯に顔を近づけてかぐわしい香りに目を細めていました。

公園内には約1500本の桜がありますが、当然のことながらまだ硬い蕾のまま。
このうち1400本余りが樹齢100年を超えるソメイヨシノです。
青空の下、蔵王の白い山並みをバックに咲き誇る光景も素敵ですが、城跡のお堀を埋め尽くす花筏は息をのむ美しさがあります。
かすかな風で次々に姿、形を変えていく様はいくらながめていても飽きることがありません。

新型コロナウイルスの感染拡大で、のんびり花見もままならない状況に。
こんな日々がいつまで続くんでしょうね。
1日も早く以前の日常生活に戻れるよう願わずにいられません。









posted by 辻蕎麦(つじそば) at 18:38| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2021年02月25日

2021年2月~3月 辻蕎麦便り






 如月。

山形や天童周辺はほとんど雪無しという稀有な昨冬の反動か、今年の冬は2年分降り積もったような大雪に見舞われました。
今月下旬になって陽光にも春の兆しが感じられ、除排雪に汗を流す日々にもようやくお別れできそうです。
一時に想像を超す降雪で大渋滞を引き起こす北陸のようなことは起きませんでした。
しかし降る量も多いが解け方も早い北陸と違って、昨年12月中旬からずっと雪の中という状態でした。

 そんな白一色の世界に鮮やかな色合いのニュースが飛び込んできました。
農林水産省が今月19日、最上川流域の紅花システムが「歴史と伝統がつなぐ山形の“最上紅花”」というテーマで国連食糧農業機関(FOA)の世界農業遺産の候補地に決定したと発表。
紅花は種から油を採り、花弁から染料としての紅を抽出します。
しかし染料としての紅は化学製品に取って代わられ、世界的も紅花栽培は油用に行われているだけで、染料向けは極めて稀になりました。
国内では最上川流域に唯一残っているだけです。
紅花生産と染色用素材である「紅餅」への加工技術が室町時代から約450年にわたって一体的に受け継がれてきたことが極めて貴重ということです。
今年秋に申請し、2022年以降に決まる予定です。

 一般的にドライフラワーなどでおなじみの紅花。
北アフリカ原産でシルクロードから中国を経由し3世紀ころ日本に伝来したといわれています。
山形県では室町時代から栽培されてきましたが、急拡大したのは江戸時代の中期以降。
最上川流域の肥沃な土壌と日々の気温の高低差が大きく朝霧の発生しやすい気候風土は紅花の生育に適しており、さらに北前船とセットになった最上川舟運の発展がそれを後押しします。
出荷量は全国の約40%にも達しました。
「紅一匁(もんめ)は金一匁」といわれるほど高価で、京都などに運ばれ口紅の材料や紅色の染料として使われました。
特に口紅は人気があり、玉虫色に変化する紅の艶やかさは多くの女性を虜にしたといわれています。

 紅餅を運んだ北前船は、京都や大阪から多くの産物を持ち帰りました。
そのひとつがひな人形。
最上川流域の旧家にはこうして運ばれた豪華なひな人形が数多く残っております。
ひな祭りの時期である3月から4月にかけて、代々受け継がれてきたひな人形を座敷に飾り、多くの人々に楽しんでもらおうと縁側を開けて公開してきました。
近年では県外からも観光客が訪れるようになりましたが、今年は新型コロナウイルスの感染予防のためにほとんどが中止せざるをえないということです。
寂しい限りですが、来年の再開を心待ちにしております。





posted by 辻蕎麦(つじそば) at 12:45| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2021年01月15日

2021年1月~2月 辻蕎麦便り






睦月。

明けましておめでとうございます。

新型コロナウイルスの感染拡大とすさまじいばかりの豪雪に見舞われるというなんとも重苦しい年明けとなりました。
先月半ばから降り出した雪は、まさかと思っていましたが、そのまま根雪になってしまいました。
昨年の8月でしたか、ラニーニャ現象により今年の冬は気温が低く、雪も多めといった情報が流れました。
昨年は山形市周辺も全く雪無しという珍記録を打ち立てた冬でしたので、その分がまとめて降るのかななどと、あらぬことを考えていましたがとんでもありませんでした。
2年分プラスアルファで、記憶の彼方に去っていた光景を呼び戻すような積雪量でした。

最高気温が零度以下という真冬日が続いたために、降った雪が解けずにそのまま積もってしまいます。
一時、1㍍を超す豪雪に襲われた北陸地方ですが、中旬以降に気温が上昇しあっという間に解けてしまいました。
今年の山形盆地はなぜか気温が上がりません。
このままではいつになったら春がくるのやらと思わされるこの周辺とは大違いで、ちょっぴり羨ましくなります。

寒さの中で一足先に淡いピンクの花をつける山形特産の啓翁桜。
出歩くこともままならない首都圏の友人に、少しでも心の癒しになればと年末に贈ったところ、「正月に見事な花が咲いた。本当にきれい。早く青空の下で以前のような花見ができるといいね」という便りが届きました。
地元の新聞によると、ホテルや旅館などに飾られる140㌢以上の長いものは需要が落ち込んでいますが、家庭用の80㌢クラスは好調で、全体として昨シーズンより10万本多い110万本の出荷を見込んでいるということです。
雪に覆われたハウスの中で育った啓翁桜が可憐な花をつけて、とかく沈みがちな人々の心を浮き立たせてくれていることを考えると嬉しくなります。

わがささやかな菜園も当然のことながら分厚い雪に覆われています。
初冬に収穫し残した野菜があるのを思い出し、この豪雪の下でどうなっているのかを確かめたくなりました。
一歩ずつ足元の雪を踏み固め、菜園に分け入りましたが、どこにあるのか全く分かりません。
適当に見当をつけ、スコップで掘り進めましたが、なかなか地面に到達しない。
雪の上に立ったままで掘り起こすのは無理なことが分かり、穴の周囲の雪を広めに取り除いて“足場”を造ってやったところ、ようやく地面にたどり着きました。
ちょっとした吹き溜まり的になっているのかもしれませんが、穴の深さを測ったらなんと80㌢近くにも。
雪で押しつぶされた水菜4株を収穫できましたが、晩酌のお供には最高でした。

辻蕎麦の打ち手一同さらに精進を重ね、より美味しいお蕎麦をお届けできるよう努めてまいります。
今年も宜しくお願い申し上げます。





posted by 辻蕎麦(つじそば) at 00:00| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする