2020年05月30日

2020年5月~6月号 辻蕎麦便り






 皐月。

ことしもサクランボの季節がやってきました。
青空の下でルビー色に輝くサクランボがたわわに実り、園地を吹き抜ける風に揺れる姿は爽やかそのものです。
北国に初夏の訪れを実感させてくれる象徴的光景です。

 今月27日に調査が行われたことしのサクランボ作柄見通しが発表されました。
今月上旬の開花期に低温や降雨があったため園地や樹木によってややばらつきがあるようです。
着果数は平年よりわずかに少なく、作柄は平年比94%の「やや少ない」となっています。
最も果実肥大は良好で、品質の良いサクランボが期待できるということです。

 真冬の技術研修会や寒風の中での剪定作業、それに雨による裂果防止のための巨大なビニールテントのセッテング、病害虫の防除作業、摘果と1年中懸命に努力を続けているサクランボ農家。
暖冬で雪がほとんどなかった今年の冬の気候が果樹等に悪影響を及ぼすのではないかと心配されていましたが、作柄的にはそう大きな問題はなさそうで、ほっとしていることでしょう。
東根、天童、寒河江など主要産地では、お客さんが自分でサクランボの木から直接もぎとって食べられる観光果樹園が数多くあります。
6月に入ると、県内外から大型観光バスやマイカーで大勢の観光客が訪れ、初夏の味覚を心行くまで楽しんでいます。
しかし今年は新型コロナウイルスの感染拡大を懸念し、多くの観光果樹園が休園することになりました。
間もなく歓声が飛び交い、笑顔でサクランボをほおばる光景が見られる。
それを楽しみに作業を続けてきた関係者の心境を思うと忍びないものがあります。

 観光果樹園を休園するわけですから、これらのサクランボを収穫、箱詰めして出荷しなければなりません。
これらはすべて人手が必要で、近年は出荷専門の農家でも労力確保に頭を悩ましています。
それに観光果樹園分がプラスされるわけですから、なかなか大変な状況になりそうですが、この難局をなんとか乗り切ってほしいものです。

 わが園地で昨年収穫したジャガイモの中でやや小ぶりなものを種芋にしようと残しました。
例年なら4月中旬に植え付けますが、雨続きで土がべとつき作業は先延ばしに。
気温の上昇とともにわずかに出ていた芽が一気に伸び出し、10㌢から15㌢くらいまでになり、芽の下のほうには根らしきものも次々に発生。
種芋は次第に痩せてくるので長くなった芽を欠き、根らしきものが出ているのだからと土に挿してみました。
これが活着し、いまでは立派な葉を繁らせています。
こんなバカなことは、農家なら絶対にやらないでしょう。
果たしてどうなることやら。
これで新ジャガが味わえるならうれしい限りですが。
当然のことながら種芋もきちんと植え付けてあります。





posted by 辻蕎麦(つじそば) at 14:03| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2020年04月28日

2020年4月~5月号 辻蕎麦便り






卯月。

鬱陶しい日々が続きます。
新型コロナウイルス。
1年で一番爽やかな時期にまさかこんなことになるとは、だれも想像しなかったでしょう。
山形県は3月末まで感染者がゼロでした。
なんとかこのまま終息してほしいと念じていましたが、31日に1人の感染が判明し、願いはもろくも崩れました。
その後は堰を切ったように感染が拡大。
あっという間に70人近くまでになりました。
県外から訪れた人が感染源だったケースが多かったことから、山形県は県境の主要な道路や空港、主要駅などで来県する人の検温を開始。
“現代の関所”として、全国ニュースに取り上げられたほどです。

福島の原発事故の際には、放射能がいつ奥羽山脈を超してくるのかと戦々恐々としておりました。
放射能の場合は計測機器がありますが、ウイルスにはそれがありません。
検知不能なうえにこのウイルスはインフルエンザなどと違って潜伏期間が長い。
初期の段階では分かりづらいようで、街で行き交う人がみんな怪しく見えてくる。
そう感じる自分が嫌にもなってきています。

今月に入っても山形は雨や曇天の日が多く、鬱陶しさに輪をかけています。
おまけに気温が低いので、菜園の土は水分をたっぷり含んだまま。
伸び放題に伸びた雑草を取ろうにも、根に土が団子状についてきて、草を取っているのか土を掘り起こしているのか分からないような状態です。
それでも無理を押して一部を耕し、ようやく種を蒔く準備を始めました。

そんな折、ほっこりするようなテレビ番組に出会いました。
辻蕎麦と同じ天童市に住む30代の全国トップクラスのスーパー農業者が、地元の小学生を指導し、種まきから収穫、販売までを行う話です。
題して「寅ちゃんと6年1組農業部」。

昨年、天童市内で一番児童数の少ない小学校の6年生全員が学校の裏の畑でカボチャ、サツマイモ、ネギ、枝豆作りに取り組みました。
19人の部員が作物ごとに4つの班に分かれ、それぞれの育成に汗を流す。
体験農業といえば、種まきや苗の植え付け、収穫など、いわば美味しいところを味わうだけで終わるのがほとんどです。
しかしこの農業部はそんな甘いものではありません。
今では、農家の子供でも農業経験があるのは稀でしょう。
純農村地帯にあるこの小学校も例外ではなかったようです。
猛暑の中で繰り返される草取りは、中腰作業なので暑いうえに腰が痛くなる。
子供たちの表情には大変さが色濃くにじんできます。
しかし優しくも厳しいこの指導者は手抜きを一切許しません。

そんな子供たちの表情が一変するのが収穫期。
ネギを引き抜いたり、サツマイモを掘り起こす子供たちの笑顔は、それまで味わった苦労、苦痛がすべて喜びに変わったことをうかがわせます。
自分たちが手塩にかけた野菜を使っての給食。
何物にも代え難いほど美味しかったようです。

ハイライトは収穫した野菜の販売。
地元のお店でなく東京郊外のスーパーに修学旅行を兼ねて出掛けるというものでした。
自分たちで袋に詰め、値札を貼った野菜を山積みにした台の周辺で、持参した手作りのポップを掲げて懸命に売り込みます。
「こんな立派な野菜を本当に小学生だけで作ったの」などという声とともに瞬く間に台の上が空っぽに。
晴れがましくも充実感がみなぎっている子供たちの顔が忘れられません。
この部活を通し、教室の授業では得られないものを数えきれないほど学んだのではないでしょうか。

番組に触発されたわけではありませんが、新型コロナウイルスで幼稚園が休みの孫とその友達を呼び寄せ、ホウレンソウと小松菜の種蒔きを手伝ってもらいました。
日頃見られないほど真剣な眼差しで、1粒1粒丁寧に溝に置き土をかぶせていました。
数日して緑の点々が現れましたが、「次は何をやるの」と早くもお手伝いを楽しみにしております。





posted by 辻蕎麦(つじそば) at 11:45| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2020年03月29日

2020年3月~4月 辻蕎麦便り






 弥生。

それにしても不思議な冬でした。
先月も触れましたが、いくら暖冬でも除雪作業を一度も行うことなくシーズン終了などというのは記憶にありません。
降りが強い朝は小1時間も費やす除雪をしなくて済むのですから嬉しい限りです。
雪国でない地域では毎年こんな感じで冬を過ごすのでしょうね。
うらやましくもあり、憧れていた世界を実感できたといったらオーバーでしょうか。

それでもいくばくかの雪は積もったのです。
山形地方気象台のデータによりますと、山形市内で今冬の最深積雪は7㌢でした。
これが2月に3回、3月に1回ありましたが、気温が例年より高いこともあり、あっという間に消えました。
一面が白い世界というのを連続してみることはほとんどありませんでした。
ちなみに前のシーズンの最深積雪は53㌢もあったのです。

雪国としては雪の少ない冬を有難がってばかりいるわけにもいきません。
スキー場、除雪車のオペレーターなど雪を相手に仕事をしている人たちがたくさんいるのです。
“変則”ということがいかに人々の生活に大きな影響を及ぼすかを再認識させられました。

暖冬で季節の移ろいもスピードアップしています。
わが菜園の片隅にある梅の古木は昨年より2週間も早く白い花を咲かせました。
水仙も早々に開花。
桜の蕾は今にも割れんばかりになっています。
迷惑なのは雑草。
この時期は土がたっぷり水分を含んで粘土状になっており、除草作業がままなりません。
それをいいことに縦横無尽にはびこっています。
野菜栽培に向けての作業が間もなく始まりますが、その前に雑草を片付けなければならず、見るたびにうんざりしています。
こうした中、ちょっぴり嬉しいのは、晩秋に採り残したままになっていたハクサイの茎立ちが食卓に春の香りと味を運んでくれることです。
晩酌のお供にぴったり。

桜花爛漫の候。
いつものこの時期ならまさにルンルンといったところでしょう。
しかし新型コロナウイルスが猛威を振るうこの春はそうした気分を一掃。
先の見えない真っ暗闇のトンネルに閉じ込められた感じです。
中国・武漢で発生した当時は、春節が終わるころには収まるのではないかと思っていました。
ところがあっという間に世界的規模で感染が拡大し、日々報じられる感染者や死者は想像を絶する数字になってきております。
専門家によると終息するまでには相当の時間がかかるということですが、1日も早く撲滅への道が開けることを願ってやみません。






posted by 辻蕎麦(つじそば) at 18:10| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする