2019年11月30日

2019年11月~12月 辻蕎麦便り






 霜月。
季節は巡る。
地球温暖化で年ごとに異常気象が異常気象でないような気がしてきています。
それでも時はしっかり刻んでおり、ことしも降雪のシーズンを迎えました。
山形や天童などでは今月末になって、早朝の庭先や家々の屋根に白いものが目立つようになってきました。
蔵王連峰をはじめ朝日連峰、月山などで出羽三山も真っ白な頂がまぶしく感じられます。

 外の景色が白一色になる日も近いのですが、そんな中でほっこりさせてくれるのが干し柿です。
昔ほど多くはありませんが、軒先に縄のれんのように暖かそうな柿色が連なっているのを眼にすると幼心に帰るような気がしてなりません。
以前にもここで触れたことがありますが、剪定どころか収穫もしない「荒れた柿の木」が随分目立つようなってきました。
手間暇かけて干し柿を作るより、ケーキを買ってきた方が簡単で美味しいものを口にできる、といったこともあるのでしょうが、やはり超高齢化社会が色濃く反映しているようです。
所有者が高齢で樹木の手入れができなくなり、伸び放題に伸び、収穫もままならなくなってしまったというところでしょう。
日本の原風景のひとつともいえる干し柿の縄のれんが産地以外では姿を消すかもしれません。
ちょっと寂しい気がします。
もっとも幼い時からそのような光景を目にしたことのない人々にとってはぴんとこないかもしれませんが。

 異常気象といえば、今月わがささやかな菜園で珍事が相次いで起こりました。
恐らく掘り残したと思われるジャガイモが葉物野菜の畝で数本芽を出し、どんどん成長したのです。
最初は「なんで今ごろ」と首を傾げましたが、邪魔にならないので放っておきました。
当然のことながら追肥や土寄せといった普通のジャガイモ栽培のようなことは一切やりません。
最低気温がマイナスに突入する寸前に、このままでは枯れるだけだからと引き抜いてみました。
なんとピンポン玉を一回り大きくした「新ジャガ」が数個出てきました。
山形盆地では4月中旬から5月頃に種芋を植えて、7、8月に収穫するのが一般的です。
まさか11月下旬に「新ジャガ」を収穫できるなんて。
せっかくなので蒸していただきましたが、ほくほく感があり、味は凝縮されて濃厚でした。

 秋になって芽が出たのはジャガイモだけでなく、トマトもあちこちに出てきて茎を伸ばしていました。
こちらはさすがに花を咲かせたり実をつけるまでにはいきませんでしたが。
花を咲かせたのはサヤエンドウ。
白い花を次々に開かせ、楽しませてくれました。
もっとも最低気温が急激に下がり、月末までにはいずれも自然の摂理に戻ってしまいましたが。
来年以降もこうしたことがあるなら、ちょっとやってみたいことも出てきています。
菜園の野菜たちは異常気象でいろいろ傷めつけられましたが、楽しみも残してくれたようです。

 いよいよ師走。
辻蕎麦の工房では、新たな年に向かい幸多かれと期待と希望を込めてお召し上がりになる最高の年越しそばをお届けするため精魂込めて作業を続けております。





 
posted by 辻蕎麦(つじそば) at 18:16| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2019年10月30日

2019年10月~11月 辻蕎麦便り







 神無月。

「山形県と秋田県にまたがる鳥海山できょう初冠雪が観測されました」。
テレビやラジオで28日こんなニュースが流れました。
「えっ、まだだったの」といぶかる気持ちで耳を傾けていたら、平年に比べて18日も遅いということです。
やはりと納得した瞬間、40年ほど前の10月10日を思い出しました。
当時鳥海山の近くに住んでおり、休日だったこの日鳥海登山を計画していたのです。
きれいに晴れ渡った青空の下、早朝から登り始め、7合目にあるカルデラの鳥海湖近くまでたどり着いた時、わが目を疑う光景に出合いました。
一面の草紅葉の上に白い粉砂糖を薄く振りかけたように、雪がふわーっとのっているのです。
口でふっと吹けば、飛んで行くのではないかという感じでした。
雪国生まれの雪国育ちですが、こんなきれいな雪景色は初めてです。
夢の世界に迷い込んだのでは、と思ったのも束の間、歩みを止めた瞬間に汗でびっしょりの体を凄まじい冷気が襲ってきました。
慌てて素っ裸になり下着を取り替えました。
幸いにも周囲に人影は全くありませんでした。

 それにしても18日も初冠雪が遅れるなんて。
これも地球温暖化というか、異常気象の影響なのでしょうか。
異常気象といえば、台風19号。
被災者の皆様には心からお見舞い申し上げます。
実は山形市や天童市などがある山形盆地は自然災害の少ないところで、深刻な台風被害もめったにありません。
ところが今回の台風は、山形盆地の一部で建物損壊や農作物への被害をもたらしました。
ささやかなわが菜園でも野菜の多くが見事になぎ倒されました。
こんなことはあまり記憶にありません。
自家用だし、完全にダメになったわけではありませんが、専業農家の方たちは本当に大変でしょう。

 異常気象といいながらも季節は移ろって、ことしも新そばの時季を迎えました。
ソバの栽培面積が北海道に次いで2位の山形県。
週末にはあちこちで新そば祭りが開かれ、さまざまなイベントを繰り広げ多くの人でにぎわっています。
イベントといえば、県内にはそばにまつわるギネス記録があるのです。
1998年に村山市の「村山蕎麦の会」が、山形そばの代名詞でもある板そばで企画。
長さ約90㍍の板の上に新そばを盛り、約600人が一斉に食べるというものでした。
圧巻だったでしょうね。
そばを打ち、茹でる人たちのことを考えたらその大変さがしのばれますが。
この催しは規模を縮小し、毎年行われているようです。

 わが工房でも、新そば特有の馥郁たる香りに包まれながら、作業に励んでおります。
それぞれの蕎麦粉が持つ特長を最大限引き出し、美味しいお蕎麦をお届けできるよう懸命に努めておりますので、存分に味と香りをお楽しみください。







posted by 辻蕎麦(つじそば) at 13:13| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする

2019年09月29日

2019年9月~10月 辻蕎麦便り







 長月。

 酷暑やゲリラ豪雨など厳しい気象にさらされた今年の夏でしたが、自然界の植物たちは強いですね。
いくら痛めつけられてもその都度立ち直り、すっかり実りの秋にふさわしい姿を見せてくれています。
その実りが満載の施設を紹介します。

 天童市の隣の東根市にあるJAの産直施設「よってけポポラ」。
2年前の日本農業新聞によりますと、年間売上高は13億円余り。
JA産直施設では全国で16位にランクされており、東北では唯一10億円を超しています。
約600人の農家が登録し、毎日、採りたての果物や野菜を持ち込んでいます。
売れ残った商品はその日のうちに回収するとか。
完全に畑と売り場が直結しているわけです。
ここの特徴は、なんといっても果物の多さでしょう。
全国生産の7割を占める山形県のサクランボ。
東根市はこの施設を運営するJAの名前「さくらんぼひがしね」からもうかがえるように、サクランボの主産地なのです。
このシーズンはモモが一段落し、ブドウに移ってきています。
シャインマスカットや巨峰など高級ブドウの代名詞のような品種が品物を並べる台にあふれるように積まれています。
あと1カ月もするとリンゴやラフランスなどが主役になるでしょう。
お客さんは周辺の住民でなく、意外にも多くが仙台市やその近隣の人たち。
実は東根市や天童市、山形市は奥羽山脈という日本列島の背骨の中ほどで仙台市と接しています。
仙台の中心部からこの施設までは車で約1時間。
ドライブを兼ねて買い物を楽しむ市民の車の列は長々と続き、土、日曜などは、仙台市内まで連なっているのではと思わせるほど。
駐車場の車のナンバーは「仙台」「宮城」が7~8割で、「山形」は1割ほど。
仙台郊外で買い物をしているのではないかと錯覚しかねません。
サクランボもそうですが、果物は遠くにいる家族や親せき、友人などに送るのでしょう。
自宅で消費する野菜と一緒に、化粧箱に入った果物を5箱、10箱と大量買いし、せっせと宅配伝票に記入する人たちであふれかえっています。

 山形の実りの秋の光景として目につくのは田んぼの黄金の穂波とソバ畑の広大なうねり。
うねりも純白から枯れた色に、茎も緑から赤味ががったものになってきました。
田んぼでは稲刈りが順調に進んでいます。
ソバの収穫もほどなく始まるでしょう。
いよいよ新蕎麦の季節がやってきます。
良質なソバがたくさん採れて、美味しいお蕎麦を皆さんにお届けできるよう期待しております。






posted by 辻蕎麦(つじそば) at 20:13| Comment(0) | 辻蕎麦便り | 更新情報をチェックする